脳機能の遂行力について、知る事から始める大切
こんにちは陽の助です。
今日は認知症家族の会の、県代表の方の講演会に参加してきました。自身の経験から認知症の母を介護していく上で感じた認知症に対する専門的知識の大切さや、男性介助者が陥りやすい一人で抱え込んで、孤立化し虐待に発展してしまう危険性や、回避の仕方などを学びました。
認知症について学ぶという意味では、認知症の発症後の母とのかかわり方でしたが
予防にも繋がる大切な部分が多かったと思います。特に私が聞いて心に残った部分は
「認知症を患ってからの母のも、人生の中のほんの1ページなんです」という言葉でした。
この言葉からは、今、目の前にいる母の行動を理解する上で、母の歩んできた道のりを理解する事が、それに繋がると教えて頂きました。私もその通りだなと思い紹介させて頂きました。
そんな認知症ですが、ここ最近は認知予防として、脳機能の低下について生活で主に使われる脳機能5つを中心に言葉の意味や、その機能を司る脳の部分、活性化に効果的なトレーニング方法の紹介を行ってきましたが、今回は「遂行力」について書いていきたいと思います。
まず最初に、遂行力とは言葉の定義
ものごとを計画したり、順序立てたり、効率的に進められるよう優先順位をつけたりと、目的を成し遂げるために必要となる力が遂行力です。
社会生活をする中で効率的に行動できるのは、この遂行力が働いているからです。仕事をするときはもちろん、料理など家事をするときにも遂行力が働きます。
例えば、味噌汁を作る過程を想像してみて下さい。実際には目の間に味噌汁がない状態から皆さんは、鍋にお湯を沸かして出しを取ったり、お湯が沸くまでの間に、まな板や包丁を用意しネギや豆腐など味噌汁の具を切ったりします。そして、具を入れ味噌を入れる作業を行います。この作業は一度に複数の作業を同時に行い、時間的にも効率的な物です。
遂行力が衰えると
遂行力を働かせているのは脳の「前頭葉」という部分です。
前頭葉は、医学的疾患や外傷によって障害を受け機能が低下することもありますが、加齢によって機能が衰えていくこともあります。前頭葉の機能低下により遂行力が衰えると、ものごとを順序立てて行ったり、複数の作業を同時に行ったりといったことが困難になります。
前述した料理の例で言えば、包丁とまな板を用意しても、順序立てができないので次に何をしたらよいのかがわからなくなってしまう事があります。また、ふたつ以上の作業を同時に行う事が難しくなる為、お湯を沸かしながら野菜を切る、といったことも難しくなります。
このほか、携帯電話の使い方がわからなくなや、券売機の使い方がわからず切符が買えない、安全に運転できない、など、遂行力の衰えは社会生活に大きな影響をきたします。また、自発的に動くこともできなくなるため、誰かに指示されないと行動ができない、といったことも起こります。
遂行力を強化するには
遂行力を鍛えるのに効果的とされているのが、ナンプレ(ナンバープレース)といった数字パズルやロールプレイングゲームです。ただ、これらはレベルが幅広く、遂行力に問題がない人でも難しいものもあります。
遂行力の状態に合わせたレベルのものを行うことが効果的です。こういったゲームやパズルがそもそも好きではないという人には、地図や時刻表を使って目的のものを調べるといった方法もおすすめです。今日一日のスケジュールをつくったり、献立を計画したりするのもよいでしょう。
どうでしたかでしょうか?簡単ですが認知症予防について、脳機能について主に生活で使われ、長谷川式テストやMMESテストで測定される記憶力、判断能力、言語能力、計算力、遂行力について紹介させて頂きました。
認知症予防で大切な事は
①認知症予防の定義を考える事
認知症予防とは「自身の年齢以上の脳機能の低下があり、生活に何らかの支障が出ている状態にならない事」
②脳機能の詳細を知る事
長谷川式テストやMMESテストで測定される生活で主に使われる脳機能は記憶力、判断能力、言語能力、計算力、遂行力の5つ。
③各脳機能を司る脳の部位と働きを知り、自身の低下している部分を強化する事
・記憶力は前頭前野、大脳、海馬の働きが重要。
・言語能力は言語中枢のブローカ中枢やウェルニッケ中枢の働きが重要。
・計算力は前頭葉の働きが重要。
・遂行力は前頭葉の働きが重要。
④脳細胞レベルで「細胞数(ニューロン)×結合数(シナプス)」で脳機能を考える
効果的な認知症予防のトレーニングを行う為には、低下している脳を中心的に強化する必要があるが、トレーニングの際に、苦痛やストレスを利用者が感じて、脳細胞の減少が急激に進まないか注視しながら提供しなくてはいけない。
無理やり、いやいや行うトレーノングではシナプスの再構築はできるが、それ以上に脳細胞が減少してしまうリスクがあり、結果的に脳細胞数×結合数がの数値が悪化してしまうケースもあるからです。
ここの理論を知らずに、いやいや認知症予防のトレーニングを受けている高齢者の方を今まで何人か見てきた経験から「これは今後増えてくるかもしれないし、何とかしないといけない問題だと」感じ、私も認知症について勉強するきっかけになりました。
⑤生活に何らかの支障は、認定調査の第3・4群に該当しない様に対応していく。
脳機能は年齢とともに誰でも低下していきます。その中でもう1つ、大切な予防は、具体的な支障の事例を知り、日々の生活や今後、事例の困ることがでない様に、創意工夫をして準備していく事です。
例えば、誰もが加齢による物忘れ(短期記憶)はあります。しかし、一瞬忘れたとしても、メモに取ることや、目に見える形で想い出せる工夫をしておけば、生活に困る支障は少なくなります。重要な事は創意工夫して生活に困らない準備や、認知症の知識を認知症にかかる前に身に付けておくことです。
この部分はなかなか、困っていないうちは想像すことは難しいと思いますが、認知症の勉強を重ねていくにつれてきっと分かってくる内容だと思います。
最後に
認知症予防は「知る事」から始まります。「今は必要ない」と言う方もいますが、必要と感じた時には、既に認知症が発症している状態で、進行を遅らせるための緩和治療的な予防になっていることが殆どです。
脳細胞は20歳をピークに毎日10万個ずつ減少していくと言われています。その減少を補うために人間は様々な経験を積み、脳細胞と脳細胞の伝達繊維であるシナプスを構築する事によって低下を防いでいる常態です。
もちろん、個人差はありますが新しい経験や発見が減っていく50代頃からは、このシナプスの構築スピードを脳細胞の減少が上回り、脳機能低下が始まると言われています。なので50歳を過ぎて「今は必要ない」と言う方はまずは脳の仕組みについて学ぶことをお勧めします。その後、「早いか早くないか」を判断して貰えればと思います。
現在、日本では2025年には認知症と診断を受ける65歳以上の高齢者が20%以上に到達するという試算が出ています。認知症はけっして特別な病気ではありません。まずは全ての世代の一人一人がこの病気に向き合い、学ぶ機会が増えればと思います。