脳機能の中の、言語能力の低下を防ぐ、1番の予防方法はこれだ!
こんにちは陽の助です。
今回は認知症予防の目的の一つ、主な脳機能5つの低下について「言語能力」をテーマに書いていきたいと思います。また、以前、携わった障害者施設での体験談などを含めて、分かりやすく解説できればと思います。
まずは言葉の理解から、「言語能力」とは
言語能力は、相手の言葉を理解し、言葉を用いて自分の意志を相手に伝える力のことを言います。
私たちは、自分の思いや考えを言葉無しに完全に伝えることはできません。言葉を話せない赤ちゃんは泣くことで不快を伝え、周囲の人は経験からなぜ泣いているのかをおおよそ察することはできますが、毎回100%理解しているとは言えないでしょう。
自分の意志を的確に伝えるため、他人とコミュニケーションをとるために重要となるのがこの言語能力なのです。
言語能力の詳しい解説
脳には言語に関わる部位があり、その部位を「言語中枢」といいます。
言語中枢は、ブローカ中枢とウェルニッケ中枢に分かれます。ブローカ中枢は言葉を発する機能であり、ウェルニッケ中枢は話し言葉を聞いて理解するための機能と考えられています。
たとえば、言葉を聞いて理解するには左脳にあるウェルニッケ中枢という感覚性の言語野を使いますが、話すときはブローカ中枢という運動性の言語野を主に使います。
※言葉を理解するため使うのはウェルニッケ中枢
また、耳から入った言葉は聴神経を経て聴覚中枢にたどり着き、ウェルニッケ中枢に伝達されます。そこで言葉を理解しています。人の言う言葉の理解のみではなく、自分の頭の中の考えを言葉として組み立てることもおこなわれています。
※言葉を発するためや、自身で頭の中で組み立てるときはブローカ中枢
つまり話そうとするときは、まずはウェルニッケ中枢が話し言葉の元となる文章の構成をおこない、弓状束という神経経路を経由してブローカ中枢に伝達されます。
言語能力は脳機能のひとつで、認知症ではこの言語中枢が障害され言語能力の衰えが見られることがあります。
言語能力が衰えると
言葉を話す、話を理解する、文字を書く、文字を理解する、といったことが困難になる「失語症」を招くことがあります。
失語は大きく「感覚性失語症」と「運動性失語症」に分けられます。
感覚性失語は、言葉は流暢に話せても相手の言っていることや文章が理解できないのが特徴です。
運動性失語は感覚性失語とは逆で、相手の言っていることや文章を理解できても
自分で言葉を発したり文章を書いたりすることが困難になるものです。
脳の働きから分析すると
ブローカ中枢は話すために必要な運動を発語器官の筋肉に伝達し、言葉として発します。その間、ウェルニッケ中枢は発話に関わる筋肉の動きを監視し、言葉が正しく伝わっているかどうかを確認します。
これら言語に関わる中枢や周辺領域が損傷を受けることによって、”失語症”を発症すると言われています。
言語能力を強化するには
例えば、相手が言っていることを理解するのに時間がかかったり、文章の内容がなかなか飲み込めなかったりなど、言語能力の衰えを感じたら、言語訓練を行いましょう。
一般的には言語能力を強化するには、ものと言葉を結びつける訓練が有効と言われています。
まず、ものが描かれたカードを数種類用意します。そして、他の人にいずれかのものの名前を言ってもらう、もしくは漢字で書いてもらい、それが描かれたカードを選び出す、という方法です。漢字はその形に意味があるため、ひらがなよりも理解しやすいとされています。
先ほどの方法とは逆に、描かれているものを漢字で書く、という方法も言語能力を強化する訓練になります。また、新聞のコラムなどの音読・書写も非常に有効です。こちらはひとりでも行えるので、ちょっとした空き時間ができたらこの訓練をやってみる、
という習慣をつけるとよいでしょう。
ちなみに、前頭前野(言語中枢も含む)を活性化するさまざまな脳機能トレーニングを比較検討した結果、複雑なトレーニングよりは簡単なトレーニングの方が前頭前野を活性化することが近年の研究で発表されています。
たとえば,<8-6>といった単純な計算が、<54÷(0.51-0.19)>といった複雑な暗算よりも、はるかに前頭前野を活性化することが実証されています。
前頭葉を鍛えるのに「音読」がいい理由を分かりやすく表している実験もあります。
これは、福岡県大川市にある介護老人福祉施設・特別養護老人ホーム「永寿園」の方々44人(70~98歳)の認知症の高齢者に対して行った実験です。
「考え」中
「ビデオゲーム」中
「音読」中
図の赤い部分は、脳の血流が増加したときを表しています。
難しいことを考えているときよりも、楽しいはずの「ビデオゲーム」よりも、「音読」の方が、前頭葉を含め、明らかに脳の血流が活性化しています。
さらに、文章を読む活動の差についても研究し,黙読よりは音読が前頭前野を活性化するという研究結果もあります。
脳の前頭前野(言語中枢含む)の脳機能の低下か発達の遅れがあるかの違いはあれど、同じ脳の部分が原因で幼少期に診断を受ける病気としてASDやADHDがあります。
ASD(自閉症スペクトラム障害)とは、発達障害の一つの分類で、社会性やコミュニケーションに困難を抱える障害です。 以前は自閉症、アスペルガー症候群などと別々の障害とされていたものを、一つの連続した症状としてまとめた新たな分類方法です。
ADHDは、注意欠陥多動性障害とも呼ばれ、不注意(集中力がない・気が散りやすい)、多動性(じっとしていられない・落ち着きがない)、衝動性 (順番を待てない・考える前に実行してしまう)の3つの要素がみられる発達障害のひとつです。
以前、私が勤めていた障害者施設の利用者の中にもASDやADHDの診断を受けていた方がいました。そして、日々、前頭前野の刺激となるトレーニングやサポートを受け、将来の自立に向けて過ごされていました。
私はこの時期に学んだ、障害者施設でノウハウを認知症予防にも使えるのではないかと考えています。介護、障害の違いはあれど、原因となっている脳の部分は同じと言う事で、現在、この分野の専門医の研究も進んでいます。
まとめ
・言語能力は脳の言語中枢が管理している。
・言語能力が低下すると「失語症」などの症状が出てくる。
・前頭前野(言語中枢含む)の活性化には「音読」が有効。
今回は5つの脳機能の中でも「言語能力」について、解説していきました。また今回は紹介できなった内容で、障害者施設で実際に行われている言語能力の向上トレーニングや、その他の認知症予防で行われているトレーニング内容も今後、説明していきたいと思います。是非、続きも読んで頂ければと思います。
簡単! 判断能力を向上させる 認知症予防!
こんにちは陽の助です。
今回も前回に引き続き、生活の中で主に使われる脳機能の中で「判断能力」についてのトレーニング方法や、鍛えられる脳の部位などを中心に書いていきたいと思います。
「判断能力」とは
「判断能力」はいくつかの脳機能が統合されたものです。
その中には
・脳の中で検索して正解を求め、意識的な判断に基づく「判断力」
・好き嫌いに近い感覚を使って最適な選択を瞬時に引き出す「直感力」
・物体の状態や形状を把握する「空間認識」
・年月日や今の自分の状況を把握する「見当識」
・必要なことに集中する、一度にふたつ以上のものに注意を向けるなどのときに使う「注意力」
・ものごとをグループに分けて考える「グルーピング」
などが含まれます。
一般的には「判断力」という言葉を使うときには、「私の上司は判断力がある」「あのチームのキャプテンは判断力に優れている」など、ものごとを決定する力を意味していることが多いですが、厳密にいうとこれは判断能力を基に決断する「決断力」になり、判断能力とは異なります。
脳機能における判断能力とは、外出して今自分がどこにいるのかを把握したり(見当識)、テレビを見て理解しながら食事をしたり(注意力)など日常の中で働くものを指します。
厳密に説明すると「判断力」と「直感力」は違う
一般的に「判断力」と「直感力」の違いとは
「判断力」は時間をかけて導き出した考えや行動と言われています。
一方、「直感力」はごく短い時間で導き出した考えや行動と言われています。
脳科学的に言うと
「判断力」とは、ある程度、意識的に答えを導き出したものであり、
「直感力」とは、ほぼ無意識的になんらかの決定ができるものと考えられています。
ポイント
脳科学的には判断力と直観力の違いは、答えを導き出す時間ではなく、意識的か無意識的に判断したかによって区別されています。そして、「判断力」と「直感力」では、脳が活動する場所も違うと言われています。
判断力と直観力の違いについて、将棋を使った実験では、指し手に一定の時間を与えて、次の一手を考えてもらい、その人たちの脳を調べると、「前頭葉」という、思考、計画、知的な判断をする部位の活動が最も高まってきました。これは、羽生善治さんのような名人・上級の人や、素人でも共通しています。
逆に時間を短縮した早ざしの状態にし、瞬間的に次の一手を決めてもらう実験に切り替えたところ素人クラスの方々は、前頭葉の活動がさらに盛んになってくるのですが、名人・上級をふくめプロクラスの人たちは、前頭葉の活動が小さくなり、「線条体」という部位がぐんぐん活動を高めていきました。
「線条体」とは
脳の中でも、あまり聞き慣れない部位ですが、一体どんな機能や役割があるかというと、たとえば私たちは卵を割らずにそっと握ることができます。また、一度乗り方を覚えれば、自転車だって転ばずに乗れるようになります。「線条体」は、こうした人の無意識的な行動の運動調整に関わっていると言われています。
また「線条体」には「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部分があり、この部分は、人の快感に関わるドーパミン神経系と強く結ばれていると言われています。
つまり、線条体で『無意識的な行動』と『快感』が結びついている為、人は特に意識せず簡単にできることに対して、「気持ち良さ」を感じると言われています。
ひいて言えばは、それが「やる気」にも繋がると言う考え方の人もいます。
たまに、「線条体」に刺激を与える事で「やる気」を引き出すトレーニングなどの本も見かけるのはこの考え方が基になっているのだと思います。
また「線条体」は古くから運動にかかわることが知られていた部位です。特に運動のスイッチ、これからどういうふうに動くか(直感力)といったタイミング設定をしている脳の部分と考えられていました。最近では線条体の腹側には、快感の中枢である側坐核があり、運動や行動と「快感」(やる気)のマッチングをしている脳の部分とも言われています。
ちなみに、将棋の早ざしの実験では、線条体の活動が高まってくるプロクラスの人たちの中でも、プロの入り口の棋士と、名人クラスでは明らかな線条体の活動の差が出ていました。
もちろん、名人クラスの方が線条体の活動が多く、これはおそらく、経験の差から、
線条体に組み込まれている神経ネットワークが圧倒的に高度化しているからと考えられています。
「判断力」と「直感力」の違いまとめ
脳の中で検索して正解を求め、意識的な判断に基づくものが「判断力」であり、経験を積み重ねていくことで、成功、失敗のタグが貼り付けられ、そのタグを利用して、「なんかいい感じ」「なんか嫌な感じ」という、好き嫌いに近い感覚を使って最適な選択を瞬時に引き出す、これが直感的な判断が「直感力」ということになります。
「判断能力」が衰えると
判断能力は脳の「前頭葉」という部分が機能することで働きます。前頭葉は、病気や外傷、加齢による脳の老化などでその機能が低下することがあります。前頭葉の機能低下によって判断能力が衰えると、社会生活を営むうえでさまざまな問題が起きやすくなります。
例えば、時間や季節がわからなくなったり、今いる場所が把握できなくなったりする「見当識障害」は認知症の特徴的な症状でもあり、「徘徊」などの主な原因と言われています。(「徘徊」という言葉は現在、認知症患者の方々から不適切との声が上がっており、現在は「一人で外出が困難な状態」という言葉使いに差し替えている新聞会社もあります。)
注意力が低下する「注意障害」では、ものごとに集中できずぼんやりしてミスが多くなります。さらに、判断能力が衰えると正しい判断ができなくなるため、社会のルールを守ることが難しくなる事もあります。度々交通違反をしてしまったり、店のものをお金を払わずに持って帰ったりしてしまうこともあり、そのため、認知症患者が犯罪や事故に巻き込まれてしまうケースもあります。
判断能力を強化するには
一般的には、「判断力」の強化には散歩が効果的といわれています。できるだけ行く場所や道順を変え、新鮮さを取り入れながら歩き、様々な視覚、聴覚、嗅覚的等の刺激を感じる事によって、前頭葉の活性化を図ります。迷子になるかも…と不安がって外出を抑える事は脳へ刺激が与えられずかえって状態を悪くさせてしまうことがあります。
(1人で外出する場合は、介護保険適用の居場所がわかるGPS機能つき商品も現在はあります。)
また、ストレスを感じない程度に、カレンダーや時計を確認し、日時を頭に入れるように意識する事も効果があると言われています。
「空間認識」を鍛えるには、目を閉じて作業を行う事が効果的と言われています。本をそろえたりリモコンを操作したりといった普段何気なく行っている作業も目を閉じると難しいものになります。特に、目を閉じたまま字を書くことは難しく、これだけでも簡単に手の感覚に集中するため注意力強化にもつながります。
その他にも、判断力、直感力、見当識、空間認識、注意力、グルーピングのトレーニングは様々あります。
今回は深くトレーニング方法は紹介しませんが、需要があれば詳しく、画像などを添えて記事を書いて行きたいと思いますので、興味のある方は是非コメントを下さい。
最新!脳細胞レベルで効く、認知症の記憶力トレーニング!
こんにちは、陽の助です。
・最近、なかなか新しいことが覚えられない
・テレビを見ていても芸能人の顔はわかるのに、名前が出てこない
・あれ?こっちの部屋に何を取にに来たんだっけ?
こんな経験はありませんか?これは記憶力を司る脳の機能低下によるものです。脳は20歳を過ぎると脳細胞の数がピークを過ぎ、正常な成人でも1日に10万個ずつ、脳細胞は減少すると言われています。その為、何もトレーニングを行わなければ、脳の機能は自然と低下していく一方です。
脳細胞とシナプス
しかし、人間の脳には脳細胞と脳細胞を繋ぐシナプスという伝達組織があります。このシナプスは年齢を重ねるごとに、様々な経験を経て増えていくと言われています。
脳機能とは簡単に説明すると、「脳細胞×シナプス」であり、減っていく脳細胞以上に様々な体験を通してシナプスが増えていけば、脳機能は低下する事はありません。
私の場合
例えば20歳を過ぎた途端に、頭の回転が遅くなったと感じる人は少ないのではないでしょうか?私の場合は20歳を過ぎてから、脳細胞自体は減っていると思いますが、大学、社会人を経験して20代の頃よりも30代に入ってからの方が、頭の回転や、仕事の速さが増した様に感じがします。
成長曲線から考える
しかし10代、20代と比べて基礎代謝や持久力、集中力などは低下した感じがします。
皆さんは脳機能の発達していく特性を説明する「スキャモン曲線」というグラフをご存じでしょうか?このグラフは成長発育を20歳でのレベルを100%として考え、各体の組織の発達・発育していく特徴を4つのパターンに分けてグラフ化したものです。
このスキャモンの発育発達曲線を参照すると、神経系統は生まれてから5歳頃までに80%の成長を遂げ12歳でほぼ100%になります。この時期は、神経系の発達が著しく、さまざまな神経回路が形成されると言われています。
神経経路の成長期
またゴールデンエイジ(10~12歳)と呼ばれる時期があり、特徴は「即座の習得」です。「即座の習得」とは見よう見まねですぐできてしまうことを意味します。
ゴールデンエイジ期の子どもは、初めてチャレンジする動作でも、手本を見ただけでできてしまうことがあります。
大人の場合は、動く前に動作を理性で理解し分析しようとします。
「足の位置は・・・」「ひじは・・・」「タイミングは・・・」の様にまず考えてから動きます。これに対して子供は、パッと見た直感だけで動きのコツをつかみ、その動作を習得してしまいます。これが、ゴールデンエイジ(10~12歳)と呼ばれる時期の特徴です。ちなみに最近ではこの理論を用いて、子供にいろいろな体験を積ませている保護者も多いようです。
誰でも50歳過ぎると
話しが少しそれましたが、この様な発育プロセスを経て、人間は20歳以降、脳細胞の減少が始まり、50歳以降からはシナプスの減少も始まると言われています。その結果、徐々に大半の脳機能が低下を始めます。
特に脳細胞は減るスピードも速いため、適切なケアをしないと、個人差が大きく出ます。そこで今回は「脳機能の低下を防ぐトレーニング!記憶力編」をテーマに書きたいと思います。
脳機能の中の「記憶力」
以前、病院や免許センターで受ける認知症のテストについて、主に診断される脳機能は5種類だと説明しました。
1 記憶力
2 言語能力
3 判断力
4 計算力
5 遂行力
脳細胞レベルで認知症予防がわかる。脳機能の低下について 参照
その中でも、今回は記憶力の予防について書いていきたいと思います。
記憶力とは言葉の定義
ものごとを忘れずに覚えておくことを「記憶」と言いますが、記憶力は、その名の通りこの記憶に必要な「覚えておくための力」です。
普段、生活の中でも「あの人は記憶力がいいな」などと言うことがあります。この場合の記憶力は「暗記能力(短期記憶)」を指していることが多いですが、実は、生活の中で暗記に注力する場面はそれほどありません。
私たちが生活の中で記憶力を使うとすれば、「本屋に向かいながら欲しい本を覚えておく」など、何か行動しながら短い時間だけ記憶する、というケースの方がずっと多いでしょう。このように、行動しながら記憶することを「ワーキングメモリ」「作業記憶」などと呼びます。
作動記憶は、私たちが普段会話をするときにも働いています。今話している会話の内容を覚え、理解することで会話がつながっていくのです。
ちなみに、覚えた事柄を一定時間経過後に思い出すというための能力は「遅延再生(長期記憶)」と呼ばれ、こちらも重要な記憶機能のひとつです。
記憶力の種類
・暗記能力(短期記憶)
・作業記憶(ワーキングメモリ)
・遅延再生(長期記憶)
記憶力が低下すると
記憶力を支えるのは、脳の「海馬」「前頭連合野」「大脳」といった部分です。これらがきちんと機能することで記憶力が保たれています。しかし、この機能は20~30代がピークで、以降は加齢にともない徐々に衰えていきます。
脳機能の低下によって作動記憶がうまく働かなくなると
「買い物で店に来たのに何を買うのか忘れてしまった」
「何か言おうと思ったが何を言いたかったのか忘れてしまった」
といった現象が起こります。
また、遅延再生の衰えでは、「昨夜食べたものが何か思い出せない」といったことも。こうした物忘れは誰にでも見られるものですが、特に衰えがひどくなると、人の名前や顔が覚えられなくなったりお金の管理ができなくなったりと、日常生活に何らかの支障をきたすようになります。
記憶力を強化するに
私たちは日常的に作動記憶を働かせているため、通常通りの生活を送っていれば無理に強化する必要もありません。ただし、疾患によりひどく脳機能が低下しているときには、既に覚える物事を想い出す「想起トレーニング」が有効です。
想起トレーニングとは、新しく何かを覚えるトレーニングではなく、既に頭の中にある過去に覚えた記憶を思い出すトレーニングです。
例えば制限時間を決め、この様なお題を出してみます。
「今から3分間で木編の漢字を書けるだけ書き出してみましょう」
「卵を使った料理名を想い出せるだけ答えてみましょう」
「漢数字の入っている芸能人の名前を答えてみましょう」などなど
このトレーニングは短期記憶を司る「海馬」ではなく長期記憶を司る「前頭連合野」や「大脳」を活性化させるトレーニングになります。
「想起トレーニング」の目的は
1 自分の年齢以上の脳機能の低下を防ぐ事。
2 脳機能の中でも特に、記憶力の低下を防ぐ事。
3 記憶力の中でも特に遅延再生(長期記憶)の低下を防ぐ事。
4 その為には、脳の中の前頭連合野や大脳の活性化を目指す事。
5 強いて言えば、細胞レベルで前頭連合野のや大脳の細胞数の減少以上に、刺激を与えシナプスの再構築を目指す事。
になります。
まとめ
今回は記憶力トレーニングの遅延再生(長期記憶)にターゲットを絞ったトレーニング内容の紹介をしました。どの脳機能トレーニングでも同じように、狙う脳機能、その機能を司る脳の部分の説明した上で行います。
今後、需要があれば、その他にも記憶力に関するトレーニング内容を紹介もしていこうと思いますので、興味のある方は是非、コメントをお願いします。
次回も、5つの脳機能に関するトレーニング方法や、脳機能の種類、鍛えられる脳の部位などを分かりやすく紹介していきますので是非、続きも読んでください。
やばいよ!日本の社会保障制度と動き出した認知症予防活動
こんにちは、陽の助です。
最近、認知症の記事や、テレビ番組、広告などをよく目にしませんか?10年程前までは、全然気にもしなかった「認知症」と言う言葉が、最近ではよく目や耳にする機会が増えてると思いませんか?
実は厚生労働省が2015年1月に発表した「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」の発表によると、6年後の2025年には総人口の中で、65歳以上で認知症の診断を受ける方が20%を超えるという試算を発表しています。
これは実に「65歳以上になると、5人に1人が認知症の診断を受ける」という国の試算が発表されたと言う事です。
年々、認知症の患者数は増え続ける見込みで、近い将来「国民病」と呼ばれる日も遠くないかもしれません。その為、厚生労働省もこの認知症観者数の増加スピードを少しでも遅らそうと2015年1月に(新オレンジプラン)を発表したのだと思います。
認知症の増加の他にも社会保障制度上の問題も
しかし、認知症患者数の増加だけが最近、認知症関連のニュースや広告が目につく理由ではありません。その他の理由として福祉業界で問題になっていることがあります。それが団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達する事により、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている2025年問題です。
認知症予防の背景を知る
今回のテーマは「やばいよ!日本の社会保障制度と動き出した認知症予防活動」です。これは脅かす為に大げさに話している内容ではなく、実際に日本が直面している深刻な問題です。
2025年問題とは、簡単に説明すると現在、国の社会保障費は上がる一方です。このままではいつか財源が確保できない時が来るのではないかという不安があります。既に、一部の政治家の中からも意見として出ているほどです。もし財源が確保できなければ、現在行われている介護保険サービスの縮小も可能性的には0ではありません。
現在の介護サービスが、現状の1~3割(所得に応じて)負担で受けられない場合を想像してみて下さい。もし財源が確保できず、介護負担割合が1割から2割に増えた場合、単純に介護保険サービスの月の利用料が倍になるわけです。
サービスの内容によっては、とても年金だけではまかないきれないサービスもあるのではないでしょうか?そういった状況に陥らない為に、最善の努力が必要とされていのが現在の福祉業界です。
そして、国は少しでも介護や医療費の削減の為に、未然に「認知症を防ぐための計画」も兼ねて2015年1月に(新オレンジプラン)を発表した経緯があります。
今日はこのプランの内容については深く説明はしませんが、このプランの発表の背景には急激な認知症患者の増加と、急激な社会保障費用の増加が背景にあると知って頂ければと思います。
また新オレンジプランの詳しい内容につきましては今後、需要があれば随時記事を書いていきたいと思いますので興味のある方は是非、コメントをお願いいたします。
ポイント
・厚生労働省は2025年には65歳以上の5人に1人が認知症の診断を受ける試算を発表。
・2025年問題とは、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達する事により、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている問題。
そして、上記の問題を見据え厚生労働省は、地域包括ケアシステムの構築や新オレンジプランを発表し対策を行っている。
しかし、地域包括ケアシステムの構築については、各自治体が独自の政策を作り、その自治体に合わせた内容で進めていくという性質がある為、現実問題として各自治体の窓口や、担当者の力量によって大きく政策の進展に地域格差が出ているという問題点もある。
この問題はまだニュースとして取り上げられる事は殆どないが、近い将来必ず、この問題関連がニュースは出てくる事は間違いないと思う。それはもう既に地域格差が出て来て住民からの不満も出て来ているからだ。
最悪を想定して準備する時代が来るかも
そうした認知症を取り巻く社会保障制度の環境の中、今後私たちが気をつけておかなければならない事は、「いつ社会保障制度が現状の体制を維持できなくなったとしても困らない為の準備を自身でしていく」と言う事です。
正直、現在の社会保障制度が永久に続いていくかは誰にもわかりません。
認知症は立場違えば考え方も様々
私が以前に体験した話ですが、二つの認知症家族の会の集まりに参加した際にこんな話を聞きました。
一つ目の会では、参加者A(30代女性)
「お父さんが認知症が進んでいるのに、体は動くから家の中で私の邪魔ばかりをして、毎日喧嘩してしまう。どうすればいいでしょうか?」
会の代表者(50代女性)
「大変ですね。もっと認知症が進んでくると体も動かなくなったり、何もしたくなくなるから、家族ならもう少しの辛抱ですよ」
その場にいた私は
「家族の介護疲れをケアする気持は大事だ思いますが、本人が何故、娘の邪魔をしているか等の、生活に支障の出ている部分には目を向けずに、早く体が動かなくなるまで、症状が進むまで、我慢しなさい!ってアドバイスはどうかと、、、」と心の中で思いましたが、私はその場に見学者として参加していたので何も言えずでした、、、。
二つ目の会では
参加者B(60代男性)
「最近、妻に何回言ってもトイレの失敗が続いて、ワシも毎日、体力的に大変なんですわ。どうしたらいいですか?」
代表者B(70代男性)
「それは大変ですね。けど、みんな同じような経験してきてますよ。一度、こんな風に対応してみたらどうですか?そうしたら奥さんも不快を感じないかもしれないですよ」
その場にいた私は
「この会は、認知症の当事者に目を向ける家族の会なんだと思いました。聞くと会員は男性が多く、男性の介護者は妻に対して「今まで散々苦労を掛けてきたから罪滅ぼし」的な考えを持っている人が多いと聞きました。
同じ介助者でも考え方は様々
上記を読んでどう思いましたか?(女性は冷たくて、男性は温かいっていう内容ではないのであしからず)
同じ介助者でも代表者Aは主に娘の介護疲れに配慮した返答をし、代表者Bは主に認知症患者の立場にたって返答をしていると思います。
ポイント
世の中には、代表者Aさんの考えでアドバイスをする人もいれば、代表者Bさんの考え方でアドバイスをする人もいます。皆さんを取り巻く介護業界の環境は様々です。
なので、皆さんの将来を、すべてを自治体や国に任せるのではなく、あらかじめ自分で自分の進みたい道や、サービスプランは立てておく事が必要な時代が来るかもしれません。
特に認知症予防に必要な物は、正しい知識と時間
最後に、現在の認知症予防を取り巻く社会環境について説明させてもらいましたが、これだけは、どうしても伝えたいことがあります。
それは、認知症予防については正しい知識とトレーニングする時間さえあれば、殆どお金をかけずに予防ができると言う事です。
次回は日頃、実際に私たちが行っているん認知症予防のトレーニングメニューや、脳機能別に脳の説明を詳しくしていきたいと思います。
「最近、車の運転に自信がなくなってきたなぁ」
「あれ?こっちの部屋に何を取に来たんやろ?」
「え~と、この家電製品どうやって使うやろ?」などなど
様々な事例を基に、具体的なトレーニング方法を紹介していきたいと思いますので、是非続きも呼んで頂ければと思います。
(必見)専門職しか知らない、認知症の判断基準!
こんにちは、陽の助です。
今回は認知症(症候群)予防の定義
「自分の年齢以上に脳機能の低下があり、生活に何らかの支障が出ている状態にならない事」の中で、「何らかの支障」について詳しく説明していきたいと思います。
今までのおさらい
最初にこのブログを書き始めたきっかけはに、世の中には認知症予防を行っているつもりが、逆に認知症になりやすい状態に陥っている人が多いと思ったからです。
また、基本的な部分で一般的に「認知症」や「認知症予防」に関する言葉の定義が曖昧な為、混乱している人が多いと思ったのからです。
そんな想いから、書き始めた1枚目の記事では「認知症予防の定義を明確化する事の必要性」をテーマに記事を書きました。
認知症にならない様に、または認知症の症状が進まない様にしたいと考えるのであれば、まず最初に認知症とはどの様な状態かを理解することの重要性を記事にしました。
2枚目の記事では「認知症とはどういう状態か?」をテーマに自身の経験から一番分かりやすい認知症予防の定義として「自身の年齢以上に脳機能の低下があり、生活に何らかの支障が出ている状態にならない事」と説明しました。
また「認知症」の言葉の定義になると、考え方や立場によって、十人十色のイメージや表現方法がある為、「認知症予防」の定義に絞って記事を書きました。
3枚目の記事では「自身の年齢以上に脳機能の低下があり」の部分を更に詳しく説明をすることをテーマに記事を書きました。脳機能の低下の原因を脳細胞レベルまで深く考え、わかりやすく説明する事によって、トレーニングの医学的根拠や、予防の基本メカニズムについて紹介しています。
そして、今回4枚目の記事は定義の後半部分、「生活に何らかの支障がある状態」について更に詳しく書き進めていきたいと思います。
認知症予防とは「自分の年齢以上に脳機能の低下があり、生活に何らかの支障が出ている状態にならない事」と定義した時、「生活に何らかの支障がある状態」という言葉について説明していきたいと思います。
生活への支障は誰が判断するのか?
世の中には、生活に支障があるか、ないかを判断するための明確なチェック項目があります。また実際は誰が判断しているかというと、答えは、医師や、介護保険の申請や更新時に自宅へ話を聞きに来る認定調査員が主に判断を行っています。
ちなみ支障に関する基本的なチェック項目は以下の内容です。これは認定調査員が、調査を行う際に実際に使用するチェックリストの認知症に係る項目、3群と4群、7群を抜粋したものです。
3-1 意思の伝達について
3-2 毎日の日課を理解することについて
3-3 生年月日や年齢を言うことについて
3-4 短期記憶(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)について
3-5 自分の名前を言うことについて
3-6 今の季節を理解することについて
3-7 場所の理解(自分がいる場所を答える)について
3-8 徘徊について
3-9 外出すると戻れないことについて
4-1 物を盗られたりなどと被害的になることについて
4-2 作話をすることについて
4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になることについて
4-4 昼夜の逆転について
4-5 しつこく同じ話をすることについて
4-6 大声を出すことについて
4-7 介護に抵抗することについて
4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがないことについて
4-9 1人で外に出たがり目が離せないことについて
4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくることについて
4-11 物を壊したり、衣類を破いたりすることついて
4-12 ひどい物忘れについて
4-13 意味もなく独り言や独り笑いをすることについて
4-14 自分勝手に行動することについて
4-15 話がまとまらず、会話にならないことについて
認知症高齢者の日常生活自立度
自立・I・Ⅱa・ Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・M
見ての通り、自尊心を傷つける内容も多く含まれている為、細心の注意を払って日々、医師や認定調査員によって聞き取りが行われいます。(なかにはデリカシーがなくずかずかと質問し、トラブルに発展する医師や認定調査員もいますが、、、)
質問の詳しい意味や、判断基準については今後、需要があればどんどん記事にしていこうかと思いますので、興味のある方は是非コメントよろしくお願い致します。
認知症の診断を受けている方への進行を遅らせる予防
意外と知られていないですが、認知症の予防には発症前と発症後の2種類の予防が存在します。ちなみに日頃、私が行っている認知症予防活動は主に発症前の参加者を対象に、様々な脳機能の向上を図る為のトレーニングを通して、自身の年齢以上に脳機能が低下しな様に予防活動を行ています。
一方で、発症後に行われる認知症予防の取り組みとしては、上記に紹介した、支障の項目に対して、該当するものがあれば、いかにその項目のチェックを外していくかが専門職の主な仕事になってきます。
その為には、チェック項目の意味や判断基準の理解から、本人の疾患、性格、環境、過去の人生などなどをアセスメントし、支障に対してどの様なアプローチで接すれば支障が改善するかを日々考え、試行し、検証する事が必要になってきます。
まとめ
・認知症の状態の定義を知らなければ、認知症の発症前、発症後の区別がつかない。
・認知症の予防には発症前と発症後の2種類あり、世の中には定義を知らない為に、発症前の利用者に発症後のトレーニングを行ったり、またその逆パターンを提供する事業所もあり、予防を行っているつもりが、発症しやすい状態に陥っている人がいる。
今までの経験上、こうした状態に合っていないサービスを一度受けてしまうと「あんなところは二度といきたくない!」とトラウマになる利用者も少なくないです。
今後の認知症予防に携わる方々は、こういった事例も踏まえて、その利用者の状態や、その方、個人に合った予防を提供して頂ければと思います。
あとがき
1回目から今回4回目にかけて、かなり個人的な視点から認知症の予防を取り巻く、独創的な記事を書きましたが、少しでも共感して頂ければ幸いです。
次回は視点を変えて、社会的な事実を基に現在の認知症予防を取り巻く社会の流れについて記事を書いていきたいと思います。
是非、続きも読んでみて下さい。
細胞レベルで認知症予防がわかる。脳機能の低下について
こんにちは、陽の助です。
先日、職場で年に1度の予防活動イベントを開催しました。総勢80人以上の高齢者の方々が日頃の脳機能トレーニングの成果を競い合うオリンピックの様なイベントです。
皆さん、真剣に競技に取り組んで頂き、一生懸命競い合うからこそ、勝った時の喜びも大きく、負けた時の悔しさも大きかった様子です。
このイベントを通して高齢者の方々の今後の人生に、何らかの活力をもたらすきっかけになればと思い開催しています。
脳機能の低下とは?
前回の記事では認知症(症候群)予防の定義について書きましたが、今回はその中の「脳機能の低下」について具体的に書きたいと思います。
脳機能の低下のメカニズムが知れば、日頃のトレーニングにも活用でき、明確な理論のもと、効果的なトレーニングが行えると思うので是非、読んでみて下さい。
認知症(症候群)予防の定義とは「自分の年齢以上に脳機能が低下があり、生活に何らかの支障が出ている状態にならない事」を意味します。
脳細胞(ニューロン)数と脳機能
いきなり専門用語が出ましたが「脳細胞」とは脳の中にある細胞だと思って下さい。人間の脳細胞数は約140億個あり、3~4歳で約90%が完成し、20歳でほぼ完成します。その後は、1日に約10万個の脳細胞が減少します。
ちなみに、正常な成人の脳は、約1200~1400gあると言われていますが、
認知症の診断を受ける人の脳は、約1000g以下だと言われています。
結合(シナプス)数と脳機能
またしても専門用語ですが、「結合」とは脳細胞と脳細胞を繋ぐ、伝達細胞だと思ってください。脳細胞数のピークは20歳ですが、脳機能のピークとなると話は違います。その原因はシナプス(結合)が関係しているからです。簡単に説明すると、脳細胞は単体では機能しません。いくつかの脳細胞が繋がって初めて力を発揮すると言われています。
このシナプスの構築のピークを迎えるのは、約40代頃と言われています。そして、誰でもピークを過ぎた後、50代頃からシナプスの減少が始まると言われています。
しかし、シナプスは刺激を与えることで再構築されるものであり、この特徴が認知症予防のトレーニングにおける具体的なメカニズムとなっています。
脳細胞(ニューロン)と結合(シナプス)のまとめ
・減った脳細胞は増える事はないが、減ったシナプスは再構築可能。
・脳機能は簡単に言うと脳細胞数(ニューロン)×結合数(シナプス)で変わる。
前回の記事では、
認知症(症候群)予防の定義は「自身の年齢以上に脳機能の低下があり、生活に何らかの支障がでている状態にならない事」と説明し
具体的には「脳機能の低下を防ぎ、支障の早期予防、改善を図る事」を目的とすると説明をさせて頂きました。
トレーニング理論はシンプルに
日頃、私たちの認知症(症候群)予防教室では、上記の定義に基づき、参加者の年齢の平均脳機能を数値化し、参加者はその数値以上の結果を出すためのトレーニングを日々行っています。
参加者からは、脳機能の項目別に自身の能力は今どの様な状態か目に見て把握できるため予防活動への取り組むモチベーションが持ちやすいと好評です。
なぜ年齢ごとの平均値をだすか
脳機能の低下には、大きく分けると、加齢による脳細胞の減少と疾患(アルツハイマー、レヴィー、脳血管性などなど)の2種類があります。
脳細胞の減少による「脳機能の低下」は年をとれば誰にでもあります。ここで、注意して考えて欲しいことは、「年を重ねるごとに、脳の働きが鈍くなる」と感じる事は病気(疾患)ではなく自然の摂理だと言う事です。
例えるのであれば、人間、年を重ねるごとに誰でもシワが増え、老けていきます。このシワの増えに対して、「やばい、シワが増えたから病気かも?」と心配する人は居ないと思います。
しかし、皮膚が急に赤くただれていた場合は「あれ肌荒れかも?」と疑って病院へ行く方もいるかもしれません。
何がいいたいかというと、加齢に伴い徐々に進む脳の働きの鈍さは病気ではないと言う事です。本当に心配しないといけない症状は、急に脳の働きが鈍くなったり、自分でもおかしいと感じた時です。
具体的に脳機能の向上や維持トレーニングとは
予防活動のトレーニングの提案、講演の際にこんな質問を受ける事があります。
Aさん「日頃、認知症予防の為に、クロスワードを1日2時間ほどしていますが、これで認知症にかからないですか?」
Bさん「私は認知症予防には学習療法が効果的と聞き、毎日、1時間ほど学研の計算ドリルを行っています。これで予防は出来ていますか?」
Cさん「私は今後、認知症予防を行っていこうと思いますが、何から始めればいいですか?」
私からAさんに対する返答は
「クロスワードだけでは、認知症予防としては不十分ですよ」
私からBさんに対する返答は
「計算ドリルだけでは、認知症予防としては不十分ですよ」
私からCさんに対する返答は
「脳機能Cさんの脳機能の中の苦手な部分を中心に取り組めばいいですよ」
と説明させてもらいます。
返答の理由は、病院や教習所の認知症テストで調べられる内容は、生活で使われる主だった下記の5つの脳機能だからです。
1 記憶力
2 言語能力
3 判断能力
4 計算力
5 遂行力
(1~5の能力については今後、詳しく記事を書いていきたいと思います。)
つまり、質問に対する返答の意味としては、クロスワードで鍛える事ができる、脳機能は言語能力や判断力であり。学習力法で鍛えられる脳機能は、計算力や判断力といった部分になります。何から始めるべきかはこの5つの能力の中で、自分の年齢の平均値より、低い能力からトレーニングをすることがお勧めですという意味になります。
そして、「自身の年以上に脳機能が低下しているか?否かは?」はこの認知症テストにおける5つの脳機能の合計得点で判断される為、一つの能力に偏ったトレーニングではテストに落ちる可能性が高いと言う事です。
本日のポイント
脳機能は細胞レベルでは脳細胞数(ニューロン)×結合数(シナプス)で変わります。
脳機能の低下の有無は、記憶力、言語能力、判断力、計算力、遂行力の合計値で判断される。
脳機能の低下を防ぐためには、低下のメカニズムを知ることや、認知症テストの問題構成の意味を知り対応する必要があります。この事実をを知っていれば、受験勉強の様に自分の苦手な科目への、勉強意欲も湧いてきます。
今までの認知症予防は一般的に、脳にいいことを全般的に行いましょうという、事業所が殆どでしたが、これからは自分の苦手な脳機能に積極的に予防を行う事が重要になってくると思います。
この記事を読んで頂いた方々の予防に対する考え方が、少しでも明確になれば幸いです。今後も脳機能の種類別のトレーニング方法や、人間の脳の仕組みなどについて詳しく、記事を書き進めていきたいと思います。
次回は認知症(症候群)予防のもう一つのテーマ!「生活に何らかの支障がある状態にならない事」をテーマに記事を書きたいと思いますので是非、続きもお読み下さい。
(必見)専門職しか知らない認知症の「支障」についての判断基準!
知れば予防が楽しくなる、認知症予防の簡単定義!
こんにちは、陽の助です。
日頃は高齢者の健康維持のために予防活動のお手伝いをさせて頂いています。以前は認定調査員という仕事をしており、年間400人程の高齢者のご自宅へ訪問し、日頃の様子などを聞いて回る仕事をしていました。
認定調査員とは?
「〇〇さん、最近、体の調子はどうですか~」っという感じでさりげなく話し始め、
体の調子や、脳機能の状態、生活状況などを聞き取り、市町村へ調査結果を報告する仕事をしていました。
認知症予防について
前回は「認知症予防の定義を説明せず、予防商材だけを説明する業者が多い」という話をさせて頂きました。今回は、私の経験から具体的な「認知症予防の定義」について考えていきたいと思います。
日本認知症ケア学会、元理事長の今井幸充先生は「認知症とは病名ではなく、まだ病名が決まっていない“症候群”であり、医学的には、まだ診断が決められず、原因もはっきりしていない状態である。例えるならば、風邪が風邪症候群であり喉の痛み、鼻汁、発熱などの同じ症状が見られるが、原因がはっきり判断しきれていない状態と同じである。」と説明しています。
「認知症」の医学的定義はないが「認知症症候群」の定義はある
認知症は判断基準なんてないんじゃないの?と考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。世の中には、しっかりと「認知症症候群」の有無を判断する人がいて、その判断基準にも明確なルールが存在しています。
もし判断基準がないのにも関わらず、その場の担当医の主観で「あなたは認知症(症候群)ですね」と診断を受けるケースがあった場合、皆さんならどう感じますか?「おいおい、ちょっと待ってよ、なんでそうなるんや?」と疑問に感じないですか?
当たり前ですが、認知症(症候群)の判断基準には明確ルールが存在します。しかし、かなり難しく書かれている為、少しずつ読み解いていきたいと思います。
認知症(症候群)とは?厚生労働省の説明
認知症政策を担当する厚生労働省のHPを参考に見ていきましょう。
(*注意点として、一般的には「認知症症候群」についても「認知症」という言葉を使う為、広義の「認知症」と疾患としての「認知症(症候群)」が混同しない様に気をつける必要があります)
「認知症(症候群)とは、いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)をいいます。」との説明しています。
まず最初に、この説明文には医学的な判断基準だけではなく、社会的な判断基準も含まれているという事を理解してもらいたいと思います。
「生活するうえで支障が出ている状態」についても、明確な支障の社会的な判断基準があり、これは社会的な関わりを基に判断されます。この部分の具体的な説明も今後していきたいと思いますが、今回は言葉だけの紹介とさせて貰います。
認知症(症候群)という言葉の意味
具体的に「いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪く」とはどういう状態でしょうか?私的にもう少し具体的な言葉に換えたいと思います。
「いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪く」
=「自分の年齢以上に脳機能の低下があり」と言い換えます。
これは医学的な根拠に基づく判断基準です。
脳機能の低下とは?
「いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり」とはつまり、加齢に伴う脳細胞の減少や疾患(アルツハイマー・レヴィ―、脳血管性などなど)を意味します。
この文面を読み解くポイントとしては、加齢による脳細胞の減少(ちなみに人間の脳は20歳を過ぎると、健康な人でも1日に平均10万個の脳細胞が減少していくと言われています。)は疾患ではないと言う事です。
まとめると「いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり」という文面は疾患(アルツハイマー・レヴィ―、脳血管性などなど)による脳細胞の減少を意味します。
つまり疾患による脳細胞の減少が脳機能の低下の原因だと理解してもらえればと思います。
*この「脳機能の低下」についても、今後、具体的な解説していきたいと思いますが、今回は簡単にまとめさせて貰います。
認知症(症候群)予防を説明する時
私の経験上、「認知症(症候群)予防って何ですか?」と聞かれた際に、一番わかりやすく、認知症(症候群)予防に関する要点をついた定義としては
「自分の年齢以上に脳機能の低下があり、生活で何らかの支障が出ている状態にならない事」と説明させて貰っています。
認知症(症候群)の予防が目指すべきものは?
上記の定義の良いところは予防におけるゴール地点が考えやすいというメリットがあります。要するに認知症予防のゴール地点は「認知症は症状が人それぞれ違うから、全般的に脳にいいことを行いましょう」ではなく、大きく分けて2つのポイントを目標に絞って行います。
1 自分の年齢以上に脳機能を低下させない事。
2 生活で何らかの支障がでない様にする事。または、支障が出た場合、事前に専門的な知識を身に付け、支障を改善する事。
上記を予防のゴール地点として、トレーニングを行う事です。
今回のまとめ
認知症(症候群)予防の定義とは「自分の年齢以上に脳機能の低下があり、生活で何らかの支障が出ている状態にならない事」です。
そして、認知症(症候群)予防の目指すべきものは
1 自分の年齢以上に脳機能を低下させない事。
2 生活で何らかの支障がでない様にする事。または、支障が出た場合、事前に専門的な知識を身に付け、支障を改善する事。
という事を知って頂ければと思います。
この予防の定義を知っていれば、今後、様々な認知症(症候群)予防のセミナーや研修会に参加した際に、「この方法は、この定義に基づく、脳機能の低下に使えるな」や「この関わり方をすれば、この生活に対する支障が改善できるかも」など、どんどん、アイデアが湧き出てくると思います。
また、もっと具体的に「脳機能の低下」や「生活への支障」の言葉の定義や理論を知って頂ければ、更に効果的な認知症(症候群)予防もできます。
是非、続きも読んでみて下さい。